土屋徹生は自殺?他殺で犯人は佐伯?理由をネタバレ【空白を満たしなさい】

ドラマ 空白を満たしなさいの主人公、土屋徹生の死因は、自殺でした。

途中、佐伯による他殺なのではないかと疑われるようなシーンがたくさん出てくるのですが、結局は土屋徹生自殺であり、その自殺の理由も小説で全て読了しましたので、ネタバレします。気になる方はお読み下さい。

てつおは、自殺。追ってくる黒い影は何もだったのか

てつおは、警備員の佐伯がハトを蹴飛ばしたことを咎めたことで、佐伯から目をつけられます。

ある日、てつおが会社の駐車場の車の中で寝ていて目を覚ますと、助手席に佐伯がいるのです。

佐伯はてつおに告げます。

佐伯「毎日クタクタになるまで疲れ果ててまで働いて、本当に幸せなのか?妻と結婚し、子供を育て、家を持つことが幸せだという世間一般の価値観にとらわれているのではないか?本当はあなたは幸せなんかじゃないのでは?結婚し家を持ち子供を持つことに何の意味があるのか?」

ということを問いただします。

他にも、佐伯は奥さんと生殖させてくれだの、女子中学生を誘拐して言うことを聞かせることが出来たら俺は幸せだ、だの気持ち悪いことを言うので、てつおは佐伯に強い嫌悪感を覚えるのですが、しかし、「結婚し家を持ち子供を持つことに何の意味があるのか?」という佐伯の言葉が何度も何度も心に反響するのでした。

てつおは、佐伯からその指摘がある以前から「自分は無意味なことをしているんじゃないか?こんなに時間とお金を費やして。」と何となく感じていたのです。しかしその不安から逃れる方法に『疲労』を使っていたのです。

仕事を一生懸命して、疲れてしまえば、先のことを考えずに今だけを生きていられたのです。そして、疲れるだけ仕事をしたのだから、幸福になる資格があると考えていました。

人に誇れる本物の幸福は、お金でも運でもなく、疲労で手に入れたものじゃないか。と考えていました。それで疲労しすぎなくらい仕事をしていたのです。

そして、その疲労は、バリ島への旅行でピークに達しました。

本当は、缶の企画の仕事で成功をおさめ、成功した暁には家族みんなでバリ島に行って遊ぶ。

そうすることで極限まで疲れ切った体の疲労をリフレッシュしてゼロにして、また帰ってから仕事に打ち込む所存だったのです。

 

しかし、結果は逆でした。

子供のりくが泣かないか他の人に気を使って飛行機に載せたり、溺れないかと心配しながらプールで遊ばせたり、それらも全て疲れを増やすことなのでした。

 

それらの疲れは、仕事の疲れとは違うんじゃないかなと思ったのですが、そうでもなかったのです。

精神的には違っても、肉体的には疲労は疲労として見るべきなんだそうで、鬱になって気分転換にマラソンしたり、登山したり、海外旅行に行った結果、症状をひどく悪化させてしまう人が多いそうなのです。

 

そして、徹生もその例の通りに、バリ島に行ったことで疲れがさらに溜まり、仕事に対する虚しさは消えませんでした。

缶が発売されて好調だとなっても、仕事に対する虚しさは消えませんでした。何故か、何か呆然としている自分がいたのです。

 

それは、疲労の副作用だったのです。

 

そして、佐伯の声が、考えがどんどん徹生の中に染まっていくのです。

「結婚し家を持ち子供を持つことに何の意味があるのか?」

という考え。

自分があんな人間の考えに染まっていくことに我慢が出来ず、りくや千佳には絶対に触りたくなかったのです。とにかく自分の中から佐伯の存在を消してしまいたかった。佐伯の考えに乗っ取られる自分が本当に嫌で、消してしまいたかった。そしてその方法を知らなかった。

会社の屋上で徹生を追い詰めた影の正体と自殺の理由の真相

会社の屋上で徹生を追い詰めた影の正体は、佐伯だと最初は思っていました。

だから犯人は佐伯だと考えたのです。佐伯の言葉、佐伯という存在が、てつおの生きている世界をハエがたかるような死んだ場所にしてしまうあの男。

でも、実際は違っていたのです。

その影は、なんと璃久だったのです。

 

てつおを殺したのは、息子のために生きたいと願っているてつお自身だったのです。

「結婚し家を持ち子供を持つことに何の意味があるのか?」と考え、生きることの意味を否定する自分を消してしまおうとしていたのです。

殺したいんじゃなくて、消したかった。でも、消す方法がなくて追い詰められて、最終的に自分を丸ごと殺してしまったのでした。

自殺が間違った考えだったことが、分人主義で分かった

てつおは、秋吉に説明します。

てつお「今だったら、自殺が完全に間違った考えだったということが良く分かります。」

その間違った考えというのは、「僕という人間はただ一人しかいない」という考え方だった。

 

人は、他人と関わる時、仮面を着ける。上司には上司用の仮面。恋人には恋人用の仮面、家族には家族用の仮面。

その仮面は、その本人を分けたそれぞれの別人だとも考えられる。この考え方が分人主義なのだ。

 

上司と話すときは、自分の中の上司と関わる人格である分人が。

恋人と話すときは、自分の中の恋人と関わる人格である分人が。

 

といった形で、一人の人間の中には、たくさんの分人がいると考えられるのだ。

そして、上司と関わる時の酷く委縮した、へりくだった分人は嫌いかもしれない。

恋人と関わる時の自分自身の分人は好きかもしれない。

 

自分の中に、いくつもの分人がいて、それぞれの分人に対して好き、嫌いの感情がある。

てつおの中では、佐伯と話すときの分人が大嫌いだったのだ。

「結婚し家を持ち子供を持つことに何の意味があるのか?」という佐伯の考えに同調してしまった自分の中の分人が大嫌いなのだ。

だから、その分人を消してしまいたかった。

 

しかし消し方が分からなかったし、そもそも分人という考え方がなく、そう考えてしまうのも自分なのだと思っていたために、自分丸ごと消してしまったのです。

 

でも、今では分人という考え方があるから、佐伯と関わり佐伯の考え方に染まった分人だけを消してしまえばよかったのだ。

そして、りくや、千佳と関わる時の分人を足場にしっかり生きていればよかったのだ。だから後悔している。

 

「本当の自分はただ一人しかいないと考える。だから自分のほんの一部を否定すればいいだけなのに、自分の全部を傷つけようとして、腕を切ったり首を吊ったりする。」

「自殺者は死にたいから死ぬんじゃない。ぼくは、心の底から生きたいと思っていた。生きたい、それが最後のぼくの言葉なんです」

 

と、てつおはこのように語っています。

 

この話を聞いた秋吉は「佐伯と関わった分人を消す必要はないんじゃないか。」

「消したって、佐伯に共感してしまったのなら、君の中にある何かがそうさせたってことさ。だから、またいつか同じようなことがあった時に、同じような分人が出来てしまうだろう。だから見守る、でいいんじゃないか。いやな自分になった時は、他の真っ当な自分を通じて静かに見守ればいい」

 

秋吉のこの答えを聞いて、てつおは大いに納得するのでした。

まとめ。自殺を防ぐための分人主義。これが作者の作品を通して伝えたかったことかな

てつおの自殺の理由は、まず第一に疲労。そして、佐伯に共感してしまった自分へのやるせなさ。佐伯への憎しみと、仕事や生きることに対する虚無感。

これらが原因ということだったのでした。

なんだか、自殺の理由にしてはあまりにも軽いというか、チープな感じがしました。借金で苦しんでたとか、壮絶なイジメにあったとかではありません。

しかし、そこは別にどうでもいいのでしょう。

この作品を通して作者は、自殺予防をしたかったんじゃないかなと思います。

自殺する人の気持ちは私には分かりませんが、きっと、加害者への憎しみ、自分へのやるせなさ。自分が嫌いだと言う気持ちがあると思います。

 

とくに、自分を殺すくらいですから、自分が嫌いという気持ちを持っている人は自殺者の中に多いと思います。

そこで、この作品を通じて「分人主義」を伝えることで、一人でも多くの自殺予備軍の人を救いたかったんじゃないかなと思うわけですね。

 

いずれにしてもとても読みごたえがあり、面白い作品でした。

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Posted by ありちーぬ